カリフォルニア州マウンテンビューのコンピュータ歴史博物館で、米時間の6月20日に開催された2部構成のトークイベントの第2部にAppleの元幹部のスコット・フォーストール(Scott Forstall)氏が登場しましました。イベントの中ではiPhone開発の元となる「Project Purple」やスティーブ・ジョブズ氏について語りました。
フォーストール氏は、2012年にAppleのオリジナルマップの失敗とデザイン責任者のジョナサン・アイブ氏との確執によりAppleを去ることになったと言われています。それ以後、Appleについて語ることはなく、今回のイベントが非常に注目されていました。
トークイベントでは、元ニューヨークタイムズのJohn Markoff氏がインタビュワーを務め、フォーストール氏は、様々なことを語りました。
フォーストール氏によると、ジョブズ氏は友人や家族には非常に優しく、フォーストール氏が胃の痛みで入院した際には、度々病院を訪れていたことや、フォーストール氏がなかなか回復しないので、ジョブズ氏が優秀な鍼灸師を雇い、2ヶ月間、針治療を続けてくれたことなど彼とジョブズ氏の友情についてのエピソードを述べました。
フォーストール氏はスタンフォード大学出身で博士号を取得した後、それまでにインターンシップを行っていたMicrosoftとNeXTのいずれかを卒業後の進路に選ばなければなりませんでした。
フォーストール氏が1992年にジョブズ氏の面接を受けたところ、多くの話題でジョブズ氏との共通点を見出したため、安定的なMicrosoftと比べてはるかに財務的に不安定なNeXTに就職することを決めました。(その後、1996年12月にジョブズ氏がAppleに復帰すると同時にNeXTを買収し、後にそこで開発していたNeXTのOPENSTEPをベースにMac OS Xが開発されました)
iPhone開発の元となる「Project Purple」が始まったのは、彼がMac OS Xの開発に取り組んでいるときでした。
ジョブズ氏が、タブレットコンピューティングの興味を持ったのは、Microsoft幹部への憎しみが始まりでした。ジョブズ氏の妻、ローレン・パウエルの友人の夫が、Microsoftの幹部で、あるミーティングでジョブ氏の神経を逆なですることを発言しました。
Microsoft、その当時スタイラスを使用するタブレットのプラットフォームを開発していました。ジョブズ氏は、Apple独自のソリューションでMicrosoftに挑戦することを決断しました。
「Project Purple」は、外付けの余計なハードウェアを使用しない人間のタッチを含むインターフェイスのコンピュータシステムを開発することを目的としていました。
Appleの技術者は「Project Purple」で静電容量式タッチセンシングスクリーンとに基づくマルチタッチユーザーインターフェースを開発していました。
Appleは、当時売上げの半分をiPodに依存し、コンピュータ企業からコンシューマーエレクトロニクス企業に変化を遂げていました。
そのため、Appleはデジタル音楽市場とiPodを発展させた新製品の開発を目指していました。その中でスマートフォンは有力な候補でした。
ある時、ジョブズ氏からの誘いでフォーストール氏は、ランチを一緒に食べることになりました。彼ら二人は当時のスマートフォンのマーケットリーダーであったBlackBerryのようなハードウェアキーボードのインターフェイスが好きではありませんでした。彼らの周囲の人間もそうでした。
Jobs氏は、Forstall氏と彼のチームがポケットに収まるくらいの大きさのマルチタッチ・デバイスのデモを行うことができるかどうかを尋ねました。フォーストール氏は、この時から、iPhoneの元となる技術開発が始まったとのことです。
初代iPhoneは2007年に発売されました。ジョブズ氏が2007年1月の基調講演で初代iPhoneを発表しマルチタッチインターフェイスは話題を集めましたが、当時のiPhoneは信じられない話ですが、コピー&ペーストもできないデバイスでした。今回のフォーストール氏の話は、それより前の話です。
以前の記事で紹介しましたが、初代iPhoneのプロトタイプのユーザーインターフェイスはスコット・フォーストール氏以外にも、iPodの父と言われているTony Fadell氏が開発していました。
Tony Fadell氏の開発したものは、iPodに似たデザインで、フォーストール氏のデザインはアイコンベースでした。最終的には、フォーストール氏の開発したアイコンベースのユーザーインターフェイスが採用されました。
初期のプロトタイプで動作していたOSは英Acorn ComputersのAcorn OSでした。最終的な製品には、フォーストール氏が開発していたMac OS XをベースにしたiPhone OS(後のiOS)が搭載されました。
NeXTコンピュータからジョブズ氏の元で働いてきたフォーストール氏がiPhoneやMacの開発に役割は非常に大きいと言えます。
また、彼はミュージカルに精通していてApple退社後は、ブロードウェイ・ミュージカルのプロデューサを務め、彼の作品がトニー賞を受賞するなど、芸術面においても多才な人物です。
(参考:AppleInsider、Business Insider)
Last Updated on 2017年10月1日 by Editor
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